参考症例
Cases大きな虫歯 生活歯髄療法
2018.08.01(水)
医療従事者向けの投稿になります
歯髄に近接する大きなう蝕が生じていても、診査の結果によっては部分的もしくは大部分の歯髄の保存が保存可能になります。
歯内療法を専門とする歯科医師が一番重要視するのはもちろん治療事前の「診査診断」になります。
ほか無菌的処置環境での治療の実施
露髄した際の歯髄組織の確認とその際の判断と処置
厳密なシーリングと修復補綴処置
治療後の(短期から中長期的な)予後観察
になります。根管治療に関しても同様に当てはまる部分が多くあります。
下のケースにおいては右上7番の近心部分に大きなう蝕が確認できました。
事前の診査においては生活歯髄療法も可能になる状態が確認できました。
浸潤麻酔、近心部分のう蝕を完全除去、隔壁作製、ラバーダム防湿を行い、より歯髄に近接するう蝕を除去していきました。
大切になるのは露髄直前のう蝕を除去する前に、再度周囲にはう蝕が残存していないかをチェックすることが大切と思います。(露髄後う蝕を除去した際にう蝕内の細菌が歯髄に侵入する可能性があるためです)
また、露髄直前のう蝕を除去する際に再度新品のバーに交換し使用する配慮を行います。(それまで使用しているバーの目地にう蝕の切削屑が付いているためです)
下がう蝕を全て除去した際の露髄した歯髄になります。
健全歯髄でも血流がありますので、「血」は確認できますが、感染していない場合でかつ切削バーで触れた程度のものであれば時間を待てば止まります。
逆に歯髄が生きていても感染により炎症を生じていれば待機していても止血しません。
(止血といっても何かの歯科用の材料で止血処置を行うわけではありません)
炎症性出血 上部の歯髄除去により止血 覆髄処置
このケースにおいては後者でした。露髄部分から深部へすこしづつ炎症性歯髄を除去していき、止血が確認される部分は健全歯髄と判断できますので、その部分よりも深部の歯髄組織を保存します。
その際ケミカルサージェーリーとしてNaOClを使用する場合もあります。
止血後は覆髄材と強固なシーリンング材にて歯髄保護と二次感染防止を図ります。
患者さんへの説明はもちろんのこと、その後術中の状態を含め情報提供をさせていただき、かかりつけの先生にて修復補綴処置をしていただきます。
中・長期的にも予後観察を行って行きます。