参考症例
Cases抜歯後の治療 自家歯牙移植
2021.02.13(土)
医療従事者向けの投稿になります。
当院では依頼があった場合に根管治療を前提とした自家歯牙移植を行っております。
抜歯をしたが、やはり自分の歯でいたい という考えは我々歯科医師が考えるよりも患者さんは強く望んでいることを患者さんと相談させていただくと実感いたします。
自家歯牙移植においては
1)移植がかなう歯があり、移植をしても口腔内での機能的に影響がないないしは影響が少ないもの(多くの場合は智歯ないしは歯列から大きく逸脱している歯牙)がある
2)受容側(抜歯した側)に移植にかなう条件がある
3)外科的処置であること(全身疾患の問題などで治療自体がかなわない場合もある)
4)移植する歯が根完成歯の場合、血行再建が生じにくいため移植後根管治療を必要とすることが多い
5)咬合関係を確立させるため、破折の防止のため根管治療後に補綴処置を必要とする
また治療の全体像として見落としがちな部分としては『歯を失った理由の改善を行う』必要があります。
う蝕や歯周疾患が原因で抜歯した場合においては口腔内環境の改善や改善後の維持をかかりつけの先生方の協力を含めしっかり行なっていかないと自家歯牙移植自体がネガティブイメージになってしまうこともあります。
せっかく条件があるのであれば、またその患者さんが笑顔で過ごしていただく選択肢の一つとして自家歯牙移植は患者さんの希望にかなう場合があります。
本ケースは左上6番部に欠損(歯根破折)があり、後方の左上8番が存在して対合歯とは機能していませんでした。
CT撮影にて術前に作製したレプリカを術中に使用し、隣在歯との並行性の確認や歯列上の位置を考慮してソケットを形成し、移植を行いました。近遠心径は左上5番7番間よりも大きかったため口腔外で削合して移植しています。
治療後の経過でも歯根周囲に歯槽骨見られるようになってきています。
臨床的には術後1ヶ月から2か月程度である程度のものが咬合できる状態になったと患者さんの感想をいただきます。
今後かかりつけの歯科医院にて補綴処置をしていただきます。