参考症例|さいたま市大宮の根管治療専門歯科医院 ユモトデンタルクリニック

  • メニュー

3Dプリンター技術による歯の移植術への恩恵

2018.10.03(水)

医療従事者向けの投稿になります

 

 

 

残念ながら治療としては抜歯しなければならない状態です。

 

 

 

 

 

 

3Dプリント技術を用いた歯の移植術

 

 

 

 

 

 

 

本来であれば歯の移植術は歯内療法の分野ではなく、一般歯科の分野に該当すると思います。う蝕による予後不良歯部位への移植歯の根管治療を行う過程上、例外的に本移植治療を行わせて頂きました。

 

 

 

移植に関しては大部分のコンセプトが確立していることは先生方もご存知の通りです。

以下に箇条書きとして載せさせて頂きます。

 

 

移植においての診査診断の一部になります。

 

 

 

1)保存不可能な歯がある(大前提として患者さんの健康状態や一般的な歯科治療での注意事項の確認を必要とする)

 

 

 

2)移植に適した別の歯(多くは健全な智歯、もしくは機能を果たしていない健全歯)があること

 

 

 

3)保存不可能な歯の周囲歯槽骨がその歯を移植するのに適した条件がある

診査診断では 治療が予後良好と事前に概ねの予想ができるかになると思います

 

 

 

移植の術中の注意事項になります

 

 

 

4)保存不可能な歯を抜歯した後に抜歯窩(ソケット)の調整(骨削合)を行い移植する歯の歯根の形態(もしくは極力近似させる)とする

 

 

そのため、調整の際には移植予定の歯を抜歯してソケットに試適し必要があれば(窩が移植歯よりも小さければ移植歯が収まらないので)何度か調整(骨削合)を行い、移植歯がソケットに収まるようにする

 

 

ソケットを大きくしすぎると移植歯は収まるが、歯根と骨が術後感染により生着不良を起こす可能性が出てきます

 

 

また移植歯の繰り返しのソケットへの試適は生着に一番大事な歯根膜への傷害と処置の長時間化により治療の失敗(生着不良、吸収、癒着)を招きます。

 

 

ソケットの条件が整っている意図的再植術(同じ歯を抜歯して口腔外処置をして元の部分に植え治す)ですら抜歯してからの口腔外処置時間は15分以内とされています。

 

(数年前まででも18分以内とされていました)

 

 

 

 

5)ソケットの形態が(骨の削合)調整により整ったら、移植歯を移植、固定

 

 

 

 

診査診断はどの先生でも可能と思います。

しかし、術中のソケットの調整に関しては経験の差が出てくると私は感じます。

 

 

 

今までに移植術が失敗に終わった先生方は移植に対して良いイメージは持たないと思います。また、成功してもこんなにも治療が大変だったのであれば今後は移植術を行わないと判断されることもあると思います。

 

 

移植における多数の診査診断の1つにCT撮影での診断があります。

 

 

撮影した画像で3次元的な情報の把握と、移植術が可能な場合、処置の前準備として、経験のある技工士さんの力をお借りして、画像データをコンピューター上で編集して、移植歯のレプリカ(人工複製品)を製作します。

 

 

歯科用CBCTによる撮影によるDICOMデータが必要になりますが、歯科医院にCT撮影の用意があればレプリカの作製は環境の整った技工所さんにお願いできます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご尽力いただきましたのは越谷市の渋谷技工所の皆様になります

渋谷技工所HP  hoero.minibird.jp/shibuya.html

 

 

 

術中に限って一番大変と思われるのが上記のうち 4)であることは移植を行ったことのある先生であれば同意いただけることと思います。

 

 

 

 

 

本ケースは右上4番がC4の状態、治療としては抜歯の必要性があり、抜歯後右上8番を移植としたケースになります。

 

 

 

保存不可能な歯の抜歯を行った後に、レプリカでの試適を行いソケットの調整を行うことで、最終的に移植する移植歯の処置における口腔外時間の短縮、歯根膜のダメージの大幅な軽減を達成することが可能になります。

 

 

 

このレプリカはクラスB 滅菌器にて滅菌後、本症例に使用させていただいております。

 

 

 

抜歯窩(ソケット)にレプリカ試適時写真

 

 

 

 

 

 

移植予定歯を抜歯、移植直前にレプリカと精度比較

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シビアな隣在歯との並行性を考えた際の調整もレプリカを使用し移植歯を抜歯移植する前に理想とするソケットの状態を整え、安心して移植を行うことが可能になると思います。

 

 

 

 

 

勝手ながら、私が今まで行わせていただいた経験からメリットを挙げるとすれば

 

 

治療時間の大幅な短縮の可能性により患者さんの治療時の負担軽減

(時間短縮や必要最低限の骨削除量により)術後疼痛や腫脹の軽減の可能性

治療時間短縮、移植歯自体を試適させなくて済むため、最終的には移植歯の歯根膜のダメージ軽減により移植治療の成功率向上の可能性

術者の負担軽減

 

 

と思っております。

 

 

 

 

 

 

 

根完成歯を移植した場合に、歯髄は壊死を起こし、吸収や炎症を惹起しますので、移植後、3週間程度(やや生着を確認できる期間)から根管治療を行う必要性があります。

 

 

 

 

 

 

今回 載せさせているケースも、時期がきたら根管治療を開始する予定になっております。

 

 

 

条件のあるケースに限って、保存不可能で抜歯を行う必要がある部位への欠損補綴の選択肢の一つがより予後の望める移植術であることを願います。

 

 

 

 

医療従事者向けの投稿になりますが、一般の方がご覧になっていらっしゃれば誤解の無いように追記いたします。

 

 

全ての方が恩恵を受けられる治療方法ではありません。

 

 

治療の選択肢にバイアスのない担当医に意見を求める必要があります。

 

 

 

 

お電話でのご質問は正確性が得られないため答えできませんのでご承知ください。

 

診査後に総合的に判断し、お話しいたします。

 

 

 

 

 

 

また、それ以前に対象歯を抜歯をせずに対応できるかを大前提に考えていきます

 

 

 

 

この治療自体は私たち歯内療法専門医の治療範囲ではないですが、患者さんのご自身の歯でいる可能性を一般歯科の先生方により認知していただき、治療法のひとつとして患者さんの利益が高まることを願っております。

 

 

先生方でご相談いただくことがございましたら何なりと当院までご連絡ください。