参考症例
Cases2018.07.24(火)
医療従事者向けの投稿になります
当院では根管治療を行う前に必ず幾通りもの術前検査を行い、歯や周囲の歯肉の状態を精査いたします。
それは、その歯の状態をより正確に判断するために治療を行う上で一番重要と考えているからです。
場合によっては、その得られた情報から治療に先立って「破折診断」という検査を患者さんに提案することがあります。
いくつかの論文を読むと、
「歯根を取り巻く透過像があった歯の50%が結果的には歯根破折を起こしていた。」
「破折を生じていた歯の臨床的症状で多かったものは歯肉腫脹であった。」
「破折していたケースではフィステル(サイナストラクト)の存在していた位置は根尖側と比較すると歯冠側であった。」
「歯根破折を生じていた歯には限局的な深いポケットを形成してるものがあった。」
など破折には少し傾向があるようです。
患者さんとはそのような傾向があった場合によくご相談させていただき、同意いただいた場合にその歯が割れていないかの検査をさせていただきます。
「CTなどの画像撮影検査で確認はできないんですか?」と患者さんよりご質問いただく場合があります。
患者さんからすると、麻酔をして歯ぐきを切っての外科的な検査に対する不安があるのは、もっともだと思いますし、ほかに方法があれば、、、というお気持ちも十分にわかります。
いくつか私的な意見を述べさせていただくと
1)CT撮影を行っても根管治療済み歯はクラウンなどの補綴物や根管充填材などのアーチファクトにより、確認部位が不鮮明になっていることが多い
2)CT画像で明らかな破折を生じていると確認できるものは、残念ながらレントゲン画像でも確認できるほどの状態のことも多く、無理に患者さんをCT撮影によって被曝させる必要性はない
3)現時点ではCT撮影によって破折の有無を100%診断することはできていない
根管治療済み歯に対して破折の有無の確認のためCT撮影を行い、破折診断をする正確性はまだそんなに高くないと思っております。
現状、直接見て確認することが、一番正確であると思っております。
このケースにおいても破折の疑いがありましたので、同意をいただき破折診断をさせていただきました。
歯肉剥離後にCEJ付近から根尖側に伸展する破折線を確認、メチレンブルーにて破折線を染色