参考症例
Cases2018.05.22(火)
医療従事者向けの投稿になります。
観血的な写真がありますので、一般の方がご覧になることはおすすめいたしません。
当院は歯内療法の専門医院の特性上、根管治療後の補綴処置、修復処置はご紹介元の先生にて行っていただく連携を取らせていただいております。連携いただいている先生方におかれましては補綴処置、修復処置を非常に丁寧に行っていただきこの場をお借りしまして改めてお礼申し上げます。
原則としてかかりつけ歯科医院よりご紹介いただき、診察や治療を行っておりますが、かかりつけ医がない患者さんより直接受診の連絡をいただくこともあります。
勤務医時代に対応させていただいたケースになります。
お話を伺うと、以前右上1番に大きなう蝕、自発痛があり、根の先にも黒い影があるため根管治療を受けた。
何年も経ってからまたその歯がズキズキと痛くなってきて口蓋側歯肉の腫脹が生じてきた。
転居のため当時と違う歯科医院を受診した際に、うちでは黒い影が大きいので治療できないとのことで、患者さんご自身でインターネットで探して連絡をいただきました。
初診時のレントゲンになります。
他の検査を含め総合的に診査をさせていただいた結果
右上1番 (非歯原性の)鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞)
左上1番 症状のある根尖性歯周炎
と診断しました。
歯が原因の病気と歯が原因ではない原因ともに症状を起こしていました。
私が調べた限りでは、
先天性である鼻口蓋管嚢胞はレントゲン撮影時に偶然見つかることがほとんどで、
通常は無症状性な嚢胞である事、大きくなり感染すると症状が出る事がある。
完全な摘出により再発はほとんどない。
との事でした。
当然周囲の歯(今回であれば右上1番)をかりに抜歯しても歯原性ではないため治りません。
段階を経て
1)自発痛のある左上1番の根管治療
2)その後口蓋側の腫脹の原因である鼻口蓋管嚢胞の摘出
※現在 鼻口蓋管嚢胞の摘出は口腔外科と連携を取らせていただいております。
術後経過
幸いにも予後観察時には根尖性歯周炎と鼻口蓋管嚢胞ともに良好な経過が確認できます。
臨床において大切な患者さんの診断に困るということがあればご協力できる事があるもしれません。
当院まで何なりとご相談ください。
2018.05.21(月)
医療従事者向けの投稿になります。
根管治療においてファイル操作を行う作業長の決定というステップを経て根管の拡大形成を行うと思います。
論文では実際の根尖孔がレントゲン的根尖と一致する割合は50%程度でその他は根尖の傍らに存在するという報告があります。
現在、歯を抜歯して確認する以外に術者がその位置を確認する一番精度が高い方法が電気的根管長測定器です。
だだし、精度は80%台ですのでレントゲン撮影を行い、(特にファイルがオーバーになっていないか)2重のチェックを行います。
拡大形成は創傷の治癒の観点から根尖を超えての器具操作は行っておりません。
1)電気的根管長測定器
2)ファイル試適した状態でのレントゲン撮影での確認
両ステップを行い、解剖学的根尖孔までの距離を計測し、そこから作業長を算出します。
下のケースではこれほどレントゲン的根尖と解剖学的根尖孔の位置が離れていることも珍しいですがファイルの先端の位置を指標にし、そこから作業長を算出しています。
作業長はAPEXより1㎜を減じた長さにて根管拡大形成を行っています。
根管充填後
術後2年後
術前から予後2年
幸いにも術前の症状と根尖の透過像の消失傾向が確認できます。
これからも正確な治療を患者さんに提供していきたいと思います。
2018.05.19(土)
医療従事者向けの投稿になります。
歯根吸収
幾つかの原因においてこれが生じることは先生方もご存知と思います。
また適切な診査診断と根管治療治療が行われないと抜歯に至ることもあります。
内部吸収、外部吸収 そして比較的まれなケースであること。吸収の程度も様々になると思います。
通常の根管治療のケース(歯根吸収なし)
自発痛、打診痛もあり、診査の結果、ごく一般的な(歯根吸収もない)根管治療で対応して長期的に維持されているケースになります。(6年経過)
内部吸収
患者さんご本人はたまたま歯科医師でした。
過去に痛みの既往があり、最近になって違和感が出てきた。
ご本人がCT撮影をしたものを見させていただきました。
術前術後
根管治療をさせていただき、症状も消失いたしました。残念ながら吸収がない本来の根管壁の厚みと比べると吸収により薄くなっています。
内部吸収 その2
患者さんは今までに痛みの既往もなく、かかりつけの先生が偶然発見し、ご紹介いただきました。
治療はできますが、根管壁の厚みが極端に低下しております。治療を行うにあたり、事前に将来的な歯の破折のリスクを十分理解していただかなければならない状況です。
重度歯根吸収
少し前から違和感があった。最近咬んで痛みがある。10年ぶりの歯科医院の受診にて発見、当院にご紹介いただきました。動揺度2 唇側歯肉の腫脹、PPD 最深部6㎜
私が関わらさせていただいた方の中でも非常に重度な吸収の状態でした。
患者さんとよくご相談させていただきましたが、後日患者さんから、コスト対効果を考えた際にこの歯をあきらめるとのお電話をいただきました。
まれなケースですが、患者さんの大切な歯には重篤な状況を引き起こすことがあります。
先生方におかれましては、私たちが何かご協力できる事がありましたら、何なりとご連絡ください。
2018.05.15(火)
医療従事者向けの投稿になります。
日頃から多くの先生方からご紹介をいただきましてまことにありがとうございます。この場をお借りしてお礼申し上げます。
患者さんのために、かかりつけ医の先生より歯内療法に関わるご相談を事前にいただくことも多くなりました。
『この歯は治りますか?』という質問になります。
概ね歯内療法専門医が治療を行った際の成功率としては
抜髄処置のケース 95%
根尖に透過像がある根管治療未処置のケース 85%
過去に根管治療がされている再根管治療のケース 70%
オリジナルの根管形態が保存されていないケース50%未満
当然の事ながら、上記の統計的な成功率から再根管治療はどの先生が治療しても抜髄処置の成功率にはおよばない難しい治療になります。
専門医では根管治療を行っても治癒しない根尖性歯周炎、臨床症状は外科的歯内療法で治癒を目指します。
(外科的歯内療法:歯根端切除+逆窩洞形成充填、意図的再植)
根管治療後に治癒しない場合、外科的歯内療法を併用した時の成功率は95%以上になります。
ただし、他の要因が大きな問題を抱えていることがあります。
重度のPであったり、下のレントゲンのような残存歯質が少ないと予想されるようなケースです。
今までに何回も痛みが出て、根管治療を何度か受けていたとのことでした。
歯内療法領域の問題が解決しても、その後残存歯質が少ない歯が患者さん自身の咬合力に耐えられず破折してしまうということは本当に辛いことだと思います。(全くう蝕のない健全歯であっても破折することも当然あります)
病気が治ることと歯が長持ちすることはイコールではありません。
また治療の繰り返しにより残存歯質量は少なくなります。
術直後 根管充填(Pro root MTA)と水硬性セメントでの仮封
幸いにも現在、5年後の予後確認までが出来ていますが、破折してしまう歯も少なくありません。
かかりつけの先生が定期的に咬合の確認、調整をしていただいていることに大変感謝しております。
築造処置後、かかりつけ医の先生により補綴処置(5年経過)
歯は無くなったら増えてきません。そして繰り返し治療を行うことで残念ながら歯は少なくなっていきます。
コンセプトに則った治療により再発の可能性は減らすことができます。
大切な患者さんのために先生方のご協力が必要です。
連携をとっていただける先生がいらっしゃいましたら当院までご連絡いただけると幸いです。
2018.05.10(木)
医療従事者向けの投稿になります。
研究報告では日本人の下顎第2大臼歯が樋状根である割合が30%台と言われています。
また樋状根のバリエーションは5タイプほどあるそうです。
今回載せさせていただいている写真はタイプ1型(純粋なCシェイプ)になります。
術前写真
術前レントゲン
術中写真
根管充填、築造処置後
術後9ヶ月
対象歯が大臼歯かつ樋状根であった場合、治療が困難であることは歯科医師の先生であれば同意いただけることと思います。当院では対応できる研鑽と環境で治療に臨んでおります。
当院が何かご協力できる事がございましたら何なりとご連絡ください。